佐賀県の油流出事故で早期復旧に貢献
ナノ繊維の油吸着材を食品業界に提案

     笹原社長(左)と曽田社長

 厨房関連機器の笹原商事(鹿児島市、笹原憲久社長)は、ナノファイバー(超極細繊維)技術を使った新素材の化学繊維「マジックファイバー」を油吸着材に応用展開し、飲食店や食品工場向けにこのほど本格的に販売開始した。今年夏に佐賀県大町(おおまち)町で発生した大規模油流出事故では、この素材を使って早期復旧作業に貢献し、その吸着性能は同町や佐賀県、復旧作業に取り組んだ防衛省や国土交通省などから高い評価を得た。

 すでに自動車や機械、鉄道、商社、石油元売り、建設関連で大手企業の採用が決まった。食品業界では有名ラーメンチェーンや冷食メーカー大手などと商談が進んでいる。

 笹原社長は「飲食店に設置が義務付けられているグリーストラップ(油水分離槽)に溜まった油の除去作業はこれまで大きな負担だったが、マジックファイバーを使えば作業時間の短縮や負担軽減につながる」と語る。油調製品を手がける食品工場では油を吸った食品残さの処理負担が大きく、これも改善できるという。

 最大の特長は「圧倒的な吸着力」(笹原社長)。製品の自重の約50倍、重量20g(300mm×300mm)の規格シートで約1ℓの油を吸着する。さらに/紊狼曚錣困北だけを吸着することや吸着した油の保持性能の高さは他社にはない特長だという。

大町町は復旧作業で18万枚を使用

 「マジックファイバー」はエム・テックス(東京都中央区、曽田浩義社長)が製造元。100万分の1mmという超極細の化学繊維はナノファイバーと呼ばれ、世界各国で用途開発が進んでいる。一方で大量生産が難しく、コスト高が課題だったが、同社は量産化に成功し(特許取得済)、さらに繊維体積構造(3D構造)によって水が入りにくい構造にし、油だけ吸着することを可能にした。

 今回の油吸着材は笹原商事とエム・テックスが共同開発した。今年夏から展示会などに出展し、テストマーケティングを行ってきた。笹原社長は「最初は半信半疑の目で見られるが、実演すると全員が驚きの声をあげる」と語る。

 実際、佐賀県大町町の復旧作業では18万枚以上が使われた。「従来製品の吸着材とは比較にならない性能を持つ」(同町)として、使用した全吸着材のうち9割がマジックファイバー製だったという。エム・テックスの曽田社長によれば「従来製品は水も一緒に吸ってしまうため、吸着材が水中に沈んで流出してしまった。また、油の保持力が低いため、仮置き場から油が漏れ出して二次被害を引き起こしたこともあった」という。

 笹原商事は主力製品の油ろ過機やグリストラップ浄化剤をすでに販売しており、油吸着材を新たに加えることで現場作業の労務改善、環境保全をトータルサポートする。

左がマジックファイバー製の油吸着材、油がしたたり落ちている従来品(右)に比べて油の
保持能力が高いことがわかる

マジックファイバー製の油吸着材(左)は水を吸わない、一方で従来品(右)は水分を含ん
で沈んでいる